紅茶の雑学
◇お茶の呼び名
「茶」のことを、イギリスでは「ティー」、フランスでは「テ」、トルコで は「チャイ」といいます。
「茶」の呼び名は、世界の各国にどのようにして伝わったのでしょうか。
「茶」の発祥地は中国です。 「茶」の呼び名には、大きく分けて中国の広東語の「Cha(チャ)」と福建語の「Te(テ、テー)」、「Tay(テー)」、 「Tey(テイ)」などの2つの流れがあります。
「Cha(チャ)」は、広東から陸路で北へ伝わり、北京、朝鮮、日本、モンゴルへ、また西へは、チベット、インドから中近東、一部の東欧圏にまで ひろがりました。ロシアへは、黒海沿岸のトルコあたりからと、モンゴル からの伝播が考えられます。
「Te(テ、テー)」などは海路で伝わり、ヨーロッパへの積み出し港だった福建省の厦門(アモイ)などの方言が少しずつ形を変えて定着したものと考 えられています。
イギリスで中国茶が飲まれはじめた17世紀頃には、「茶」の呼び名ははっ きりせず、「Tsua(ツアー)」、「Ta(タ)」、「Tay(テー)・Tey(テイ)」などが混在して使われていたようです。やがてこの「Tay(テー)」 がしだいになまって、18世紀の後半頃から今日のTea(ティー)となりまし た。
世界中のどこにいっても、「茶」のことは「ティー、チャイ、チャ、テ」のどれかで通じますから、とても便利ですね。
◇ティーポット
ティーポットは紅茶をおいしくいれるのに欠かせない道具です。 紅茶に適したポットを選ぶためのポイントを簡単にご紹介します。
○形はなるべく球形のものを
ティーポットの中で紅茶の葉が上下に対流運動をすることを「ジャンピング」といいます。「ジャンピング」することで、紅茶の成分がよく抽出され、紅茶がおいしくいれられます。球形のティーポットはお湯の対流による茶葉のジャンピングが起こりやすいからです。
○材質は、保温性の高いものを!
陶磁器のものが保温性に優れていておすすめです。ガラス・ステンレス・アルミ・銅などの材質は放熱しやすく保温性はあまりよくありません。しかティーコジー(ポットカバー・茶帽子?)を使うことで保温性を高めることは可能です。
○ティーポットに向かないもの
- 鉄製の材質・・・タンニンなどの紅茶成分と接触して化学変化をおこし、茶の色を黒ずませたり、味を損なわせます。
- 「メリオール」や「ハリオール」のような、耐熱ガラス製、筒型のポンプ式のもの。ティールームなどでも良く使われていますが、本来はコーヒーサーバーです。 ポンプ式コーヒーサーバーは、放熱性が高く、ジャンピングも おこりにくいことや葉を強く圧縮して渋味がでるおそれもあり、おすすめできません。また、濃くなったときにお湯をいれるとき面倒ですね。
○その他
使い勝手もチェックしてください。
- 片手でもって扱いやすい重量のバランスの良いものかどうか
- 取っ手はもちやすいかどうか
- フタのおさまりはよいか(注ぐときにフタが落ちないか)
- 水切れはよいか
- 人数分の紅茶をいれるときのティーポットの大きさ
* 急須をティーポット代わりに使うこともできますが、鉄瓶は避けてください。また、茶渋が強く付いたものは緑茶の香りがすることが有ります。
◇ポットのための一杯
「One for the pot (ポットのための一杯)」という言葉をご存知ですか?
ポットで紅茶をいれる時に、人数分の紅茶の葉に「プラスもう一杯分の茶葉」 をいれるということで、イギリスでおいしい紅茶をいれるためにいわれた言葉です。
これは、イギリスの水が「硬水」であるため、紅茶の葉の成分が抽出されに くいからです。また、濃くいれた紅茶は薄めることはができても、薄くいれ た紅茶は濃くすることができないという、イギリス人の生活の知恵でもあります。
「硬水」とは、水に解けているカルシウムやマグネシウムのイオンが多い水のことで、紅茶をいれる際に紅茶の葉の成分であるタンニンがイオンと結合してその溶出を抑えてしまい、紅茶の味や香りの抽出が妨げられます。
反対に日本の水道水のような「軟水」は、紅茶の成分が早く良く抽出されるので紅茶向きの水とも言え、「ポットのための一杯」は必要ありません。
普段飲む水に関しては「軟水」か「硬水」を意識される方は少ないと思いますが、紅茶をいれる場合は水の硬度で紅茶の味が大きく変わります。 最近はたくさんのおいしいミネラルウォーターが出回っていますが、一般的に硬度が高いものが多く、そのため当店でも水道水をお使いくださいとご案内しております。
◇アイスティー 〜 アメリカ生まれの飲み物 !?〜
アイスティーが誕生したのは、1904年といわれています。場所はアメリカのセントルイス博覧会。
紅茶の実演販売のためにイギリス人がやってきましたが会場は大変暑く、熱い紅茶は全く売れませんでした。そこで氷をいれたグ ラスに紅茶を入れて売り出したところ、大人気を博したそうです。
暑い時に熱い紅茶ももちろんおいしいのですが、湿度の高い日本の夏は、やはりアイスティーに惹かれますね
◇ゴールデンリング 〜 カップに浮かぶ金色の輪 〜
紅茶をカップにいれた時、カップのふちに沿って、ひときわ明るく光る輪が現れることがあります。
これをゴールデン・リング(またはコロナ)といいます。
ゴールデン・リングが現れる紅茶は、カテキン類が酸化してできるテアフラビン(橙色)とテアルビジン(赤褐色)の色素のバランスが良く、品 質の高い紅茶とされます。
ただ、種類によって出にくい紅茶や、入れ方によっても出ないときがありますので、ゴールデンリングが出ない紅茶は品質が劣っているとは一概に言えません。
品質の高い紅茶は、水色に透明感があり水質も軽いということは言えます。 古くなった紅茶の水色は濁りがちだったり、水質も重くなりますので、新鮮 な紅茶を選ぶことが大事ですね。
◇ティップ 〜紅茶の新芽〜
ティップとはお茶の葉がまだ開ききっていない「新芽」のことです。 針のような形をしていて、表面には細かいうぶ毛がはえています。
ティップが入っている紅茶は、お茶の樹の先端の一芯二葉の若芽を摘んでいるということで、生葉原料の良さの証明になり、紅茶としては品質も価格 も高くなります。
ティップだけをあつめたゴールデンティップやシルバーティップは、その希少性から、マスコミに「幻のお茶」として取りあげられたこともあり、 インドやスリランカでも観光客向けに高い値段で販売されていて日本人に 一番売れるそうです。
しかし、ティップ自体はどんな方法でいれても、色・味・香りのごくうすい味気ないものです。
紅茶にティップを混ぜると紅茶がマイルドになると言われたりします。 確かに一理は有りますが、残念なことにティップを混ぜることで商品価値が高まるために商業目的で混ぜ合わされることが良く有りますので、信頼 できるお店の紅茶を使うことをおすすめします。
◇紅茶の等級 〜葉の形状と大きさを表す言葉〜
紅茶の等級とは、紅茶の製造過程で篩(ふるい)のメッシュによって分けられた、葉の形状、大きさを表す言葉です。「グレード」ともよばれます。 紅茶の葉の品質を意味するものではありません。
紅茶の抽出時間(蒸らし時間)は、大きい葉なら長く、細かい葉なら短くなります。篩(ふるい)にかけて同じ大きさの茶葉に揃えることで抽出の時間 も一定になりバランスのよい味となります。
等級の例をあげると、皆さんおなじみの「オレンジ・ペコー」や「ペコー」 などがそうです。それぞれ等級の英語の頭文字をとった記号で表されることも多く、その場合「オレンジ・ペコー(Orange Pekoe)」は「OP」、「ペコー(Pekoe)」は「P」となります。
◇紅茶の鮮度
茶も緑茶や一般の食品と同様に、時間の経過と共に湿度、温度、酸素、光、周りの匂いなどで次第に鮮度が落ちてきます。とりわけ湿気と他の匂いを吸収 しやすく、鮮度の落ちた紅茶は茶葉の香り、いれた紅茶の香り、水色の透明度水質の軽さ、渋味、コク、味に影響します。ひどいものは紅茶の味がほこりっぽく感じたり、お客様からのご相談の中にはカビが生えていたいうものもありました。(当店の紅茶のことではありません。念の為。)
紅茶も、製茶工場で作られた後、少し寝かせておいた方が品質が安定するとも いわれます。確かに一理ありますが、寝かせるということは、最適な条件で管理保管することであって、決してほうりっ放しにするということではありません。(牛肉もエージングといって、寝かせることをしますが、何日も暑い所に置きっ放しにはしませんよね。)
世界の紅茶の産地は山の中や、交通の不便なところが多くて、港までの運送の条件は良くありません。また輸出のための港も暑くて湿気が多いうえ、色々な臭いの貨物と一緒になり、そして船の長旅など産地から皆さんの手元に紅茶が届くまでの環境と時間が紅茶の鮮度を落とす原因です。
現在は海上輸送もコンテナ化されて輸送条件も格段によくなりましたが、以前 は紅茶を生産していないヨーロッパで新鮮な紅茶を飲むことは不可能でした。 その古い紅茶を美味しく飲むために、ブレンドやフレーバーティーなどの技術が発達したともいえます。
でも、新鮮な紅茶がやはり一番です。信頼できる銘柄 ?? (必ずしも有名ブラ ンドではありません)をお求めになり、開封したらなるべく早めにお飲みください。 お店で売っている紅茶でパッケージの外から香りがする紅茶は、紅茶の香りが 外に放たれていると共に、他の紅茶の香りも移るということであり、おすすめしません。